17世紀末、元禄時代の大津は百ヵ町からなる大都市に1万8千人もの人々が住み、繁栄を誇った。京町、中央、長等などの地域はその中心地にあたり以来活発な商工業活動が展開してきた。「大津百町衆」 はこの地で創業から百年を超える老舗の新世代が集まり伝統を継承しつつ新機軸をめざしている。御維新を経て二度の大戦を含む日本の百年は、まことに忙しかった。転変の百年を生き延びて湖国で繁栄した家業には、いずれも見事な商品と、それを商う個性的の哲学が伝えられている。
 店舗の入り口に立って、ぜひその「面構え」をご覧いただきたい。そしてその商品を通じて、先人の哲学が鮮やかに生きており、さらに未来に向かって活かされようとしていることを、味わっていただきたい。
 湖国文化の奥深さをお届けしたい。 (1998年、真鍋宗平 記之)
「三井寺力餅」は近江のもち米を杵づきした子餅に豊富なきな粉をたっぷりと盛り付けている。素朴でひなびたふるさとの風味がなつかしい。
 慶安のころから武蔵坊弁慶ゆかりの餅として湖国の文人が愛用したという。創業は明治2年。国道161号沿い、浜大津駅のすぐ手前に、白い大きな看板を揚げ、瀟洒な店を構えている。

大津市浜大津2−1−30
 TEL.077-524-2689 FAX.077-525-8365
http://www.e510.jp/tikaramoti/
■年中無休
■AM8:00〜PM7:30営業
水と米に恵まれた近江の地で万治元年(1658年)創業した「平井酒造」の銘酒「浅芽生」は、聖護院宮道親王から賜った歌に因んで名づけられた。
 何よりも仕込みを大切にしながら、変わることなく酒造りにこだわり続けてきた蔵元である。近年は低温で丁寧に仕上げる夏仕込みも行っている。

大津市中央1−2−33
 TEL.077-522-1277 FAX.077-522-2250
http://www.biwa.ne.jp/~asajio/
■日・祝定休
■AM9:00〜PM6:00営業
鮒の形をした蒲鉾で近江の殿様は若狭の殿様のお国自慢に一矢を報いた。大津一の蒲鉾職人の「ふなかま」昔話である。
 湖の幸を食文化に活かす長い伝統の上に、明治25年、蒲鉾の老舗「大友」は創業した。
 伝統の製法で老舗の味を一途に守る。それが大友の心意気である。

大津市中央2−6−10
 TEL.077-524-2452 FAX.077-526-0919
■日・祝定休
■AM9:00〜PM5:00営業
「鶴里堂」という一風変わった屋号は、比叡山から眺めた大津の弓なりな地形を大空に飛翔する鶴に見立てて「鶴の里」と呼んだことに由来している。
 「大津菓子調達所」として大津の町衆文化に育まれた伝統を継承する菓子司の気概は、厳選された素材と技術を通じて作り出される四季の大津菓子によくあらわれている。


大津市京町1−2−19
 TEL.077-523-2662  FAX.077-521-0280
■第1,3,5日曜日定休
■AM9:00〜PM7:00営業
鮒ずしは製造に1年以上かかる湖国独特の保存食で、近江の特産として千年余の歴史を遡ることができる。明治2年「阪本屋」が県下で初めての鮒ずしの商品化に成功創業した。それで屋号に「元祖」と称している。
 時間と自然の条件にまかせて、昔ながらの製法を伝えている。ほかの季節の魚を佃煮として食卓に供する。


大津市長等1−5−21
 TEL.077-524-1220  FAX.077-526-2404
http://www.sakamotoya.biz/
■日曜日定休
■AM9:00〜PM6:00営業
「八百与」の漬物は嘉永3年(1850)創業時以来の技法を踏襲して丁寧に漬あげている。無論添加物も一切使用しない。長等漬、千枚漬、日の菜漬、近江赤蕪漬、などなど。ほかに旬の野菜の浅漬もある。
 商標になっている扁平なかぶらは、当地特産の「近江かぶら」。今ではごく一部しか生産されなくなってしまった。

大津市長等2−9−4
 TEL.077-522-4021  FAX.077-522-4021
■水曜日定休
■AM10:00〜PM7:30営業
小麦粉からグルテンを抽出する作業には、大変な手間と根気が要る。良質なグルテンがおいしい麩をつくる鍵を握っている。「麩前」の麩は、手間を惜しまないまっすぐな心意気で製造されている。
 やき麩、なま麩、ゆば。いずれも吟味された材料を求め、毎日の食卓に安心と潤いをお届けしている。
大津市中央2−5−18
 TEL.077-524-3244  FAX.077-524-3075
■日・祝定休
■AM9:00〜PM5:00営業
昔、東海道を往来した旅人に茶を売ったのが始めと言われている。当時、茶は僧や高級武士、一部の町人の飲み物で、旅人の土産として珍重された。今も安政創業以来の無添加、無着色の自然の味を頑なに守り、店内には芳醇なお茶の香りが漂っている。
大津市中央3−1−35
 TEL.077-522-2555  FAX.077-523-3865
http://www.seiseido.com/
■日・祝定休
■AM9:00〜PM7:00営業